鹿屋ハートセンターの洗面台

- 院内感染対策を考慮して -

鹿屋ハートセンター1階の女性用トイレの手洗いです。

この手洗いにはオーバーフローがついていません。手洗いも壁掛けです。ご自宅の洗面台についている、水があふれないための穴がオーバーフローです。中をのぞいてみると多くの場合、カビで真っ黒になっていると思います。こうしたカビがつきやすい環境が医療機関にふさわしいはずがありません。水周りからの緑膿菌の感染なども医療機関では決して少なくありません。このためオーバーフローがなく水栓に手を触れる必要のない自動水栓を鹿屋ハートセンターの標準仕様としました。

医療機関の手洗いで水をためることはありませんので、オーバーフローがなくても困ったことはありません。メーカーはTOTO様です。

この仕様の手洗いは各病室にも1台ずつ設置してあります。入院されている方がご自分の部屋で洗面できることにとどまらず、各部屋で1行為1手洗いを実践するためです。1行為1手洗いは医療機関でよく言われる感染対策ですが、実際には患者様の近くに手洗いはなく実践は困難なことが少なくありません。職員に1行為1手洗いを求めるのであれば、実践できる環境を提供する責任を管理者は負っているものと考えます。病室の手洗いの周りには紙の使い捨ての手ふき、ディスポの手袋、マスク、手指消毒用のアルコールジェルが備えられています。

循環器領域で院内感染が問題になるシチュエーションは必ずしも多くありません。ですからこうしたハード面の感染対策はオーバースペックで無駄な投資かもしれません。しかしながら院内感染対策をしてし過ぎることはありません。このような仕様にしていて良かったと思ったことがあります。冠動脈内ステント植え込み後に無顆粒球症になった方が発生しました。無菌室を装備した血液内科のある病院への紹介も考慮しましたが、鹿屋ハートセンターの院内感染対策を信じて鹿屋ハートセンターに入院していただきました。結果、見事に無顆粒球症の時期を乗り切ることができました。お一人の命が守れたのですからこうした投資は無駄ではなかったと確信しています。