初診時の問診 何時から様子がおかしいのか 初めて鹿屋ハートセンターを受診していただいた時、まず最初にすることはお話をうかがうことです。何時からどのような様子なのかを聞くことは循環器診療にとってカテーテル検査や心電図、聴診器を使った診察よりも重要です。例えば1年前から階段を上ると胸が苦しいという方と、昨日の夜にじっとしていたのに胸が苦しかったという方では治療の緊急性がまったく異なります。48時間以内の安静時の胸部不快は不安定狭心症の可能性も高く、緊急入院の必要があるかもしれません。困ってしまうのは「何時から苦しいのですか」と尋ねたときに「たいしたことはない」と答えられることです。知りたいのはひどく苦しいのかということではなく、「何時から自覚症状があるのか」という点です。また「最後に苦しかったのは何時ですか」、「それは何をしていた時ですか?」という問いに対してそんなに問い詰めなくても良いだろうとお叱りを受けることも少なくありません。「ごちゃごちゃ言わずにさっさと診察や検査をしろ!」と言われることもあります。

「胃がんが心配だから胃カメラをしてほしい」という希望はありえると思います。しかし、狭心症が心配だからカテーテルをしてほしい、CTをとってほしいというのはありえないご希望と考えています。狭心症の可能性が非常に乏しい方にカテーテル検査に伴うわずかな危険も不必要な危険ですから避けなければなりませんし、CT検査による放射線の被爆も避けたほうが良いリスクです。お話を十分にうかがった上で検査に伴うリスクを冒しても仕方がないという場面で初めて次に進みたいのです。

不必要な検査を避け、お金も余りかからない方法で正確に病状を知り、良い結果を出すための最も重要な方法が問診です。あの医者は話を聞いてくれないという批判をよく耳にしますが、鹿屋ハートセンターではお話を聞く気持ちで一杯です。面倒がらずによくお話をお聞かせください。

 

  どのように様子がおかしいのか 循環器外来で最もよく聞く訴えは「動悸」です。これが難しいのです。「3日前から動悸があるので来ました」と言われても何も分かりません。私が経験した動悸の訴えの中身は様々です。「脈が速くドキドキ、ドキドキする」、「脈が大きく打つ、ドキンドキン」、「脈が飛ぶ、ドキドキ、ドッキン」の3つのパターンがほとんどです。最初の脈が速くなるドキドキドキであれば頻拍発作を疑いますし、3つ目のドキドキドッキンであれば期外収縮を疑います。お話で病気が何かを絞り込むことが可能なのです。「動悸」という難しい表現は必要ありません。感じたままに言っていただくのが何より分かりやすいのです。この他にも「動悸」と表現された中身が胸痛であったり、息苦しさであったりしたことも少なくありません。

私達が歓迎するのは、難しい表現ではなく、ありのままの素直な表現です。平易にお話をしてくださる方に私は知性を感じます。身につかない横文字を並べていた首相はあっという間に消えていなくなりました。病院でも賢く見せようとする努力は意味がありません。

 

再診時の問診   再診時に「この1ヶ月の調子はどうでしたか」とうかがいます。ほとんどの方は「なんともなかったよ」と答えてくださいますがこの言葉にだまされ何度も失敗をしました。「なんともなかったのでしたら先月にお渡ししたニトロは使わなかったのですね」とうかがうと「いや、全部使ったよ」と言われることがあります。1ヶ月に何回も胸部症状があったのになんともなかったよと言われる方が結構いらっしゃるのです。医師の側から上手に話を聞きださないと、医師の前では言いたいことを言えない方が少なくないのです。こんな些細なこと、これは心臓とは関係ないからと言わずになんでもおっしゃって下さると大助かりなのです。

 

 

 

鹿屋ハートセンター  郵便番号893-0013 鹿児島県鹿屋市札元2丁目3746-8 電話 0994-41-8100