載第4回 「人間ドックを受けているから安心?」

狭心症や心筋梗塞症は、虚血性心疾患と呼ばれ、心臓を養う動脈である冠動脈がせまくなったり、つまったりして起こる病気です。虚血性心疾患になりやすい人たちがいます。血圧の高い人、コレステロールの高い人、糖尿病の人、タバコをすう人などです。また、男性は女性に比べて若いうちに虚血性心疾患になりやすいことも知られています。負けん気が強く、怒りっぽい人やストレスの多い人もこの病気になりやすいと言われています。親が虚血性心疾患を持っていた人もなりやすいと言われています。

こうした病気を引き起こしやすい因子は危険因子と呼ばれています。こうした危険因子を複数持っておられる方は、ひとつだけの人と比べて何倍も虚血性心疾患になりやすいと言われています。人間ドックに入って血圧やコレステロール・血糖を測ったりするのはこのためです。しかし、こうした人間ドックにも落とし穴があるのをご存知でしょうか。心筋梗塞で入院された方が、心筋梗塞を起こす直前に人間ドックを受けていて異常なしと言われていたというような例を何人か経験しています。実際、心筋梗塞になった方の多くは、直前まで心電図が正常だったとの調査もあります。

コレステロールの低い方は心筋梗塞になりにくいのですが、決してならないというわけではないのです。しかし、血糖もコレステロールも低く、タバコもすっていないために安心して、胸が苦しいことがあっても大丈夫と思ってしまう方がいらっしゃるのです。人間ドックを受けたために、逆に手遅れになる場合があるという事です。狭心症になりやすい状態かどうかを見る目的の人間ドックで既に狭心症になっているかどうかを見きわめるのは難しいのです。

ただ、人間ドックに意味がないわけではありません。コレステロールが高い方が、コレステロールを下げる薬をのむことで将来の心筋梗塞の発症を減少させうることが最近明らかになりました。薬をのめばコレステロールが下がることは分かっていたのですが、本当に心筋梗塞になりにくくしているかどうかは分かっていなかったのです。人間ドックでコレステロールが高いと分かった方は、食事療法や薬の内服で将来の危険を減らす事ができるのです。糖尿病が発見された方は、タバコをやめて一つ危険因子を減らすことで将来の危険を減らすことができるのです。

家計をチェックして、将来に不安があれば毎月の貯金を増やしたり生命保険に入ったりしますが、同じように将来への備えをするためのチェックが虚血性心疾患の人間ドックの目的です。ただ、ガンの場合は、早い段階で大きな病気を見つけるのが人間ドックの目的ですから、将来への備えというのとは少し意味が異なります。

自動車の車検に問題がなかったからといって自動車事故が起きないわけではありません。人間ドックで異常がないと言われたというのは、車検に合格したくらいの意味だと理解していただければ人間ドックで失敗することもなく、目先の事故に気をつけることもできると思います。

 


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