連載第2回 「軽い狭心症の段階での治療が肝心」

今回は、狭心症についてもう少し詳しく勉強したいと思っています。

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っています。全身に血液を送り出しながら、心臓自身も働くためには血液を必要とします。心臓自身を養う動脈である冠動脈が年齢を重ねて硬く、せまくなってくると心臓自身が必要とする血液が不足するようになってしまうのです。足に行く血液が不足すると足がしびれて痛みます。心臓も血液不足になるとしびれて痛くなってくるのです。

足のしびれを思い出してください。30分も1時間もしびれたままということはありません。足を伸ばして血液の流れが回復すると5分くらいで楽になってきます。心臓も同じです。血液不足になってもしばらく休んでいると楽になってきます。このしばらくすると楽になるというのがくせものなのです。おなかが十分くらい痛んでも楽になってしまえば病院に行こうとは思いません。狭心症の人も同じです。楽になってしまうので病院に行こうという気持ちになかなかなってくれないのです。また、狭心症でやっかいなのは、必ずしも症状の出る場所が胸だけではないという点です。肩がこる、背中が痛い、胃が痛い、歯が痛い、のどがつまる、左手がしびれるといった心臓とはとても関係のなさそうな症状が出るのです。このため、狭心症なのに、整形外科や歯科にかかっている方も少なくありません。

狭心症の方の何割が心筋梗塞になるのかを知るのは難しいのですが、心筋梗塞になった方の何割の方が心筋梗塞になる前に狭心症だったかを知ることは難しくありません。私たちの経験では心筋梗塞になった方の約六割は狭心症の時期を経ていました。五分位苦しいことがあるという段階で病院に来ていただいていれば怖い心筋梗塞になる事が免れたのです。

特に危ないのは不安定狭心症といわれている狭心症です。階段を昇ると胸が痛くなってなっていたものが平地を歩いても苦しくなるようになったとか、じっとしていても苦しくなるようになってきたというふうに状態が悪化してきた状態です。この状態の狭心症は、入院して適切な治療をするとほとんど心筋梗塞になることもなく命に関わることもありません。しかし、適切な治療をしないと死亡率が高いことも知られています。

狭心症が心配だから、早く入院して検査と治療を受けたほうが良いよとお話しても、「忙しくて入院なんかできない」とおっしゃる方が少なくありません。そんなことは言わないで命が大事なのだから早く検査や治療をした方が良いとお話しても、「いよいよ悪くなったら病院に行くよ」という方が多いのです。心臓病に限らず、治療の基本は早期発見、早期治療です。いよいよ悪くなってからでは、命に関わる可能性も高くなりますし、うまく治療できたとしても入院日数が長くなったり医療費が高くなったりしがちです。簡単に治せるうちに治療すれば仕事にさしさわることもほとんどありません。五分位のことでも気になったら、専門医に一度、診てもらってください。

 


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